2013年6月16日日曜日

福沢諭吉と中江兆民

文明論之概略 明治8年(1875
「全国人民の間に、一片の独立心あらざれば、文明も我が国の用を為さず、之を日本の文明と名づくべからざる也」 (文明論之概略. 巻之六)
「其の国の文明と云うは、其の人民相集まりて、自ら其の国を保護し、自ら其の権義と面目とを全ふするものを指して名を下すことなり」(文明論之概略. 巻之六)
「国の独立は即ち文明なり、文明に非ざれば、独立は保つ可からず」
「独立自尊」

中江兆民 『策論』明治8年(1875

「父子相愛シ、兄弟相親しむハ、英仏我ニ賢ルカ、イヤ、賢ルコトガナシ。彼らのわれらにまさるものは、ただ技術と理論とにあるのみ、よろしく公私学校に課して技書理論のほかに、彼の邦の道学を研さんし、兼ねて儒学の教典を講習せしむべし。誠にかくのごとくなれば、英仏を凌ぎ、宇宙第一の善国と成ること日を計えて待つべし」




A system of MODERN GEOGRAPHY
By Mitchell, S. A.
Mitchell. S.A. Mitchell's New School Geography (A System of Modern Geography.) E.H.Butler & Co.,1872
日本でも明治初期に広く用いられた米人ミッチェルの地理書。文明の発達段階に応じて、人類をSavage(野蛮)、Barbarous(未開)、Half-Civilized(半文明)、Civilized(文明)、Civilized and Enlightened(文明開化)の5段階に区分している。このうち、ヨーロッパ人種は「色白で立派な顔立ちとよく発達した体格をしている。人類の中で最も進歩した知的な人種であり、最高度の進歩と文明を達成する能力があると思われる」と書かれている。特に米、英、仏、独などの文明開化人(Civilized and Enlightened)は「安楽で贅沢な暮らしをし、国民の大部分は満足感と繁栄にみちた生活を享受している」とする。他方で、蒙古人種は「気質は忍耐強く勤勉だが、才能に限界があり進歩が遅い」と手厳しい。日本人は「半文明人」(Half-Civilized)で、「外国人を警戒し、自国の女性たちを奴隷扱いする」とある(高梨1985参照)。


福沢諭吉訳『増訂華英通語』,快堂蔵版,1860(安政7)年
「清人の子卿原著『華英通語』を福沢諭吉が訳し『増訂華英通語』として1860<万延元>年に出版。諭吉が咸臨丸で米国に渡り,サンフランシスコで手に入れた単語集である。原書は英単語の下に音注,右に中国語訳がある。福沢はさらにカナをふったもの。(中略)発音のところはオランダ語から脱却していないところが多いが,訳語はかなり自由訳をしてある。福沢の初期の著作である。」(高梨健吉)


橋爪貫一『世界商売往来(正,,補遺)』,鴈金屋清吉,1871/72/73
日本に小学校が創設されたのは明治6年。『世界商売往来』は、そのとき小学校の教科書として、文部省制定の「小学校則」に指定された。教育の面からみると、『世界商売往来』は初等教育の語彙を知るうえで欠くことのできない文献であり、頭書にある英語との対訳は注目すべきものである。また、語彙の面から見ると、開化期の言語の実態,また訳語を知るという観点から興味深い資料である。(飛田良文・村山昌俊『世界商売往来用語索引』)


中村敬太郎(正直)訳『自由之理』木平謙一郎,18711872?)
明治初年の啓蒙的翻訳書。原書はイギリス功利主義の思想家J.S.ミルのOn Liberty(1859)で,中村正直が1871(明治4)に翻訳し,翌年刊行された。中村の人格・学識と相まって,明治前半の青年知識人の必読書となった。本書はルソーやスペンサーの著書とともに自由民権思想の形成に最も大きな影響を与えた書物の一つで,河野広中は本書を読んで〈心の革命〉を起こし,自由民権運動家になっていったという。(世界大百科事典第2版)

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